第14話 美姫さんvs運動会
珍しく美姫さんがおじいちゃんの家に来ていた。
理由は、運動会でビデオ撮影が禁止になった事だ。「なんで、運動会でビデオ撮影が禁止なの?まさおくん、PTA会長でしょ。なんでこんな時に役に立たないの?」とご立腹の美姫さん。
“役立たず”扱いされたおじいちゃんはしょげかえっている。そもそも、おじいちゃんは学校の窓口では無いんだけどね。
「子どもを守るためって言われるとな。美姫さんだって、誰かがインターネットに載せた画像でショウくんが目を付けられて、変な人に声をかけられたりとか嫌だろう?今そんな事件もあるらしいからな。」とおじいちゃんは元気のない声で話す。
「そう言われたらそうだけど。」と反論できない美姫さん。
うちの去年までの運動会スタイルはこうだ。
おじいちゃんがPTA会長であるのをいいことにおじいちゃんの来賓席にビデオカメラを一台。
それと校庭がくまなく撮影できるように4~5台のビデオカメラを設置する。
それをリアルタイムで美姫さんが家で見れるようにする。
お父さんとおじいちゃんとおばあちゃんは運動会に来てくれるけど、美姫さんは自宅でビデオカメラのリアルタイムで観賞する。
美姫さんは絶対に現地には来ない。暑いし、砂ぼこりはしてるし、人は多いし……、と美姫さんの嫌いなものがたくさんある。
さて今年はどうするのだろうと少しワクワクしながら過ごしていたら、
「じゃじゃじゃーん。今年の運動会についてです。」と美姫さんが言い出した。
そして、一軒の物件情報の紙を僕たちに見せ、
「ここから、ショウの運動会を今年は見ます。」と言い出した。
「場所どこ?。」と僕が聞くと「ショウの学校の隣のマンション。ちょうどここから校庭が綺麗にみえました。」と美姫さんは、物件情報の間取り図の一部を指さした。
満足げな美姫さん。
「ふぅーん。」僕とお父さんはあまり興味無さそうに相槌を打った。
だって、本当に興味ないから。
おわり
※この短編小説ありのママはほぼフィクションです。登場人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。