短編小説 ありのママ

料理はいつも気まぐれ

第45話 美姫さんvs料理

美姫さんは、料理が嫌い。

でも、お父さんが言うには、美姫さんは料理が“嫌い”なのではなく“出来ない”という事みたいだ。結婚した当初、美姫さんも料理を作ったことが何度かはあるらしい。

一度、お父さんの帰りが遅くなりそうなときに美姫さんが夕飯を作ろうとしたので、お父さんに【美姫さんが夕飯作るって】とメールしたら、【ダメ、ゼッタイ】という薬物禁止のポスターに書かれているような返信がきた。

そのメールの後お父さんは、慌てて帰ってきて、美姫さんが料理をしていないかを確認したくらいだ。

お父さんに理由を聞くと「ショウは、ロシアンルーレット方式の食事をとりたいか?。」と言われた。

「どういう事?。」と僕が聞くと「美味しい時には美味しいんだよ。でも、美味しくない時には本当に食べれないぐらい美味しくない。それにたまにお腹を壊すんだよ。」とお父さん。

そして、お父さんはまだ結婚したばかりの時の話を聞かせてくれた。

その日、美姫さんが「私が夕食を作るよ。」と言った。

お父さんは、元々料理を作ることが好きだったのだが、初めて美姫さんが自分に料理を作ってくれると、とてもワクワクした気持ちで美姫さんの料理をまっていた。

台所で、料理を作る美姫さんの姿を“幸せだなぁ~”と眺めていたそうだ。

すると、やたら首をかしげながら料理をする美姫さん。

その姿にお父さんの不安はドンドン募っていく。

「はい、出来上がり。こうちゃん、夕飯出来たよ。」と料理をお父さんの所に持ってきた。

見た目は悪くない。お父さんは少し安心した。

「いただきます。」とお父さんは言い、美姫さんの作った料理を食べた。

……美味しい!……

その料理は、いままで食べた料理の中で一番美味しかった。

「美味しいよ。美姫さん。」とお父さんが言うと「愛情をたっぷりいれたから、美味しいんだよ。」と美姫さんは言った。

それから、しばらくたってまた「私が、夕食作るよ。」と美姫さんが言ってきた。

あの美味しい料理が食べれるんだと期待するお父さんを尻目に、また首をかしげながら料理をする美姫さん。

“自信がないんだな。この前あんなに美味しい料理を作れたから自信を持てばいいのに” とお父さんは思っていたらしい。

「こうちゃん、夕飯できたよ。」と料理をお父さんの所に持ってくる。

いつもより一口を多めにするお父さん。

……コノヨノモノトハオモエナイアジガシタ……

美姫さんを見ると満面の笑みで「この前と同じく、愛情をたっぷりいれたから、美味しいでしょ。私の料理は愛情が決め手なんだ。」と言ったそうだ。

美姫さんは自分の作った料理は食べないらしい。

「美姫さんは、食べないの?」とお父さんが聞くと、「私、自分の愛情は欲しくないからいらない。」と美姫さんは言うそうだ。

「ショウ、愛情ではどうにもならない料理もあるんだよ。」と当時を振り返るお父さん。

うん。料理は味が決め手だもんね。

おわり

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