fic-tion’s diary フィクションの創作日記

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ありのママ 第一話 【美姫さんvsくるま編③】

初めて読む方は

ありのママ 第一話 【美姫さんvsくるま編①】 - fic-tion’s diary フィクションの創作日記

 

 

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僕とお父さんは、通ってきた道を引き返し車に戻り、美姫さんのいる西山病院に向かった。車の中はシーンとしていた。僕は、いろいろと不安になり、運転しているお父さんの顔を見た。お父さんは、真っすぐ前を見ていた。

 

「ショウ、あの車覚えているか?」お父さんが言った。「車?」僕が聞き返した。「事故をおこした車。」お父さんが言った。家の前の塀で前が壊れていた車だ。

 

“あの車、僕が覚えている?”僕はもう一度、事故を起こした車を思い出した。赤いスポーツカーだった。「あっ。」僕は、思い出した。「僕が一度轢かれそうになって運転手の人に怒られた車だ。」と言った。

 

「やっぱりな。」お父さんは言った。「えっ、なんで?」僕は、意味がわからない。「病院に行って美姫さんを見ないと確証はないけど。多分、美姫さんは元気だ。最近な、美姫さんがやけに熱心に何かを調べているって思っていたんだよ。ショウが轢かれそうになった時なんて、物凄い剣幕で怒ってたしな。嫌な予感はしてはいたんだけど。」とお父さん。「あっ。そういわれると、美姫さんが珍しく外に出て、どの車かって聞いてきた。」と僕。

 


病院に着いて美姫さんの名前を告げると“検査中”との事だった。大丈夫だと思っていても、美姫さんの顔をみるまでは心配だ。お父さんの顔を見上げると普段と変わらない表情をしていた。僕は、お父さんの手を思わず握る。

 

「斉藤美姫さんのご家族の方。」看護師さんの呼ぶ声がする。処置室と書かれた部屋の中のベッドに美姫さんが寝ていた。「美姫?」お父さんが呼ぶ。美姫さんは、目をつぶったままだった。「まだ、意識が朦朧としているみたいです。」と看護師さんは、言い「何かありましたら、そこのボタンを。」とナースコールの場所を教えてくれ、部屋を出て行った。

 

残された僕とお父さんとベッドに横たわる美姫さん。心電図の音だけが規則的に鳴り響いていた。「美姫さん」僕は、ピクリともしない美姫さんに声をかける。返事はない。少し不安を覚えてきた。「本当に意識がないのかも。」と僕。僕は酸素マスクをはめ、腕には点滴がつながり、心電図がつながれている美姫さんを見て、車の中での“大丈夫だ”という意識がドンドンと不安に変わりつつあった。

 

一分が十分にも感じ、時の流れの遅さにも涙が出そうになっている時、美姫さんの目が開いた。すぐに僕たちに気付き、「ここどこ?こうちゃんとショウ、どうしたの?用事は済んだ? 」と一声を発した。こうちゃんとはお父さんの事だ。「美姫さん、大丈夫?」僕が言うと、「何が?」と言う。そして、くあーっとあくびを一つと大きな伸びをした。そして「ここどこ?」と言ってきた。

 

続く