ありのママ【美姫さんvsネコ編⑥】完

初めて読む方は

ありのママ  【美姫さんvsネコ編①】



美姫さんvsネコ ⑥

 

「昨日、もうすぐ私の祖父の誕生日だから、喜んでもらおうと息子と一緒に一生懸命塗ったんです。

 

祖父は、ちょっと体調を崩していて……、元気になって座ってもらおうと。それも、昼間だとペンキのシンナーの匂いが皆さんのお宅のお邪魔になると思って、夕方から。

 

その椅子にお宅の猫がうちの庭に入ってきていたずらしたって事ですよね。もしかしてお宅の猫って外にも放し飼いで飼っているんですか?」と美姫さん。

 

おばさんは、その言葉にギョッとなる。「うちの敷地内で私がペンキを塗るのはいけない事なんですかね。」と美姫さんは今度は周りにいた野次馬に同意を求めはじめた。

 

美姫さんに同意を求められた野次馬の人たちは、一同に首を横にふる。美姫さんは、何故か泣いていた。

 

野次馬の一人が「猫を放し飼いにされていたんですか?もしかしてうちにしょっちゅう“フン”をしていた猫ってもしかしてお宅の猫?」と言い出した。すると他の人たちも「あっ、うちの庭にもありましたわ。猫の放し飼いは迷惑なんですよね。飼い猫でしたら、ちゃんと面倒みてください。」と言い出した。

 

おばさんは、皆に責められてどうしょうもなくなったのかものすごい形相をして自分の家の方向に帰っていった。


すると、誰にも見えない様に美姫さんはこちらに向かってベーっと舌を出した。
「美姫さんのおじいちゃんって生きていたっけ。」僕が聞く。「知る限りではもう亡くなっているとおもうけど。」とお父さん。「演技だな。」とお父さんが言うと「うん。演技だ。」と僕も同意する。最後に舌をべーっと出したのが何よりの証拠だ。


僕とお父さんは一階のリビングに降りる。

 

しばらくすると美姫さんが玄関を開ける音が聞こえた。「元気出してね。この前、事故にあったばっかりなのね。あの時は大丈夫だった?」というおばちゃんの声が聞こえる。消えそうな元気のない声で美姫さんが「ありがとうございます。不幸中の幸いと言うか……、打ち身だけですみました。今年、厄年なんです。」と返事する美姫さんの声。「そう。頑張ってね。」というおばちゃんの声が聞こえた。パタンと玄関が閉まり、リビングにつながるドアが開く。


「はぁ。疲れた。」とそこにはいつもの美姫さんがいた。そして「もう、ダメ。蕁麻疹出そう。お風呂入って寝るわ。」と言いお風呂に向かった。


僕とお父さんは「お疲れ様。ごゆっくりー。」とその姿を見送る。
「ようやく平穏な日常がはじまるな。」とお父さん。「そだねー。」と僕。お父さんが思わず笑う。つられて僕も笑った。


あの騒動後、こっそりとお父さんと猫の飼い主宅の車を見に行った。車にはクッキリと猫の足跡が多数ついていた。猫のお腹の辺りにもペンキがついていたのか、足跡以外にも大きな楕円の形をした跡もあった。それも白い車にピンクのペンキ……。ちょっと吹き出しそうになるのを堪えながら、急ぎ足でその場を去る。

 

お父さんの顔を見ると同じように鼻の穴をピクピクさせていた。二人で急いで家に戻る。玄関に急いで入る。「あれは、キツイな。」とお父さんが肩をヒクヒクいわせながら言う。「今回、美姫さんが相当腹をたてていてたから、ひどい事になっていたね。」と僕。

 

その後、猫は外で見なくなった。

 

学校の隣のクラスに家がトリマーをしている子がいるのだがその子の話によれば、家の中にも被害は多数あったらしく、朝起きたら、家の床・壁・ソファー等々ペンキが乾くまでの時間、猫がウロウロしていた所に点々とペンキの跡が残ったとの事。

 

長い毛の猫だったらしいが短く刈られたらしい。近所の“フン”被害にあっていた家が多数あり、みんながひそかに喜んでいたとの事だった。たまには、美姫さんもみんなの役にも立つんだなと少し感心した。

 

おわり

 

 

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