ありのママ【美姫さんvsオレオレ詐欺】

美姫さんvsオレオレ詐欺

 

美姫さんがニヤニヤしながら、熱心にテレビを見ている。

 

美姫さんがこんな顔をしている時は、何かが起こる前触れだ。僕は、美姫さんが見ているテレビをおそるおそる確認するとニュース番組を見ていた。

 

“ニュースみてる!”僕はびっくりした。美姫さんがニュースを見ている所なんか見たことがない。それも熱心に。明日、何か変なものが降ってこなければいいけど。


次の日、美姫さんがお父さんに「固定電話をひいてもいい?」と聞いていた。お父さんが「固定電話って、前に美姫が電話が来るとうるさいから解約してって言って解約したけど、また契約するの?」と不思議そうな顔をした。


すると美姫さんは、にっこり笑い。「大丈夫。今度はちゃんと遊ぶから。」と一言。
“遊ぶ?何するんだろう。”僕も不思議に思う。


数日が過ぎ、固定電話がうちにつながった。お父さんが美姫さんに「電話番号何番だった?」と聞くと美姫さんは「この電話は使わないら大丈夫だよ。」と言った。


僕とお父さんは顔を見合わせ、首をかしげる。“つながったのに、使わない?。まぁ、いいか。”お父さんの目がそう言っていた。


それから、家の電話には、ちょこちょこと電話がかかってくるようになった。

 

電話が鳴ると美姫さんはものすごい勢いで電話に出る。誰から電話がかかってきているのかは知らないが、すごく楽しそうだ。


「はい。もしもし須田です。」美姫さんはそう言って電話にでる。何で“須田”なのか美姫さんに聞くと「ほら、ペンネームみたいなものだよ。」と教えてくれた。いつから美姫さんはペンネームを使う人間になったのだろう。


「うちの息子なら、アンパンマンの仲間の名前を全部言えるはずです。はい、言って。」美姫さんが電話の相手に言っている。僕は、アンパンマンの仲間の名前は全部言えない。美姫さんは誰と話しているのだろう。僕は不思議に思うが、美姫さんが楽しそうなので“まぁ、いいか。”って気持ちになる。


またある日は「この電話は現在つかわれておりません。電話番号をお確かめの上……。」と機械音のマネをしている。


「合言葉は何でしょう。」とか「うちの息子はモノマネが上手だからモノマネして。」とか――。僕がいない昼間にも電話はかかってきて、毎日楽しいみたいだ。


「はい。はい。そうですか。わかりました。ありがとうございます。」といつもとは違う神妙な面持ちで美姫さんが電話にでていた。その姿に少し心配になり、電話が終わった時に「どうしたの?」と聞いた。

 

「旦那さんが事故をおこして、相手に怪我をさせたから示談金をくれって。」と美姫さんが言った。

 

「エッ。お父さん大丈夫なの?」と僕が聞くと「大丈夫だよ。これ、オレオレ詐欺だから。」と美姫さん。

 

「エッ?エッ?。お父さんの事故が本当だったらどうするの?」と僕が心配すると「大丈夫。それは絶対ないから。」と美姫さん。

 

「そんなの分からないじゃん。」と僕。美姫さんは、何でそんなに冷静なんだろう。すると美姫さんが「だって、この電話の番号知っているのって詐欺の人だけだもん。」と言った。そして、警察に電話をかけるとさっきの詐欺の人と約束した場所と目印を伝えた。


「あぁ、楽しかった。」と美姫さんは言い、家の固定電話は解約された。


後からお父さんに事の真相を聞くと、美姫さんはテレビで見たオレオレ詐欺の撃退法に興味を持ち、試したくなったらしく、家に固定電話をひいてわざわざ詐欺の人に電話番号を売りつけたらしい。

 

「でもな、美姫さん。本当は詐欺グループのお金を取ろうとしていたんだぞ。」とお父さん。

 

「えっ?。」と僕が言うと「固定電話のほかにも逆探知機とか欲しがっていたから、ちょっと怪しいなと思って何をするのか聞いたら、『詐欺師からお金をもらう。』って言いだして、そこはやめるように言ったからやめたんだけどね。

 

『だって、公に出来ないお金なんだよ。』だってさ。」とお父さんが笑う。


美姫さん。それ犯罪だよ!!。僕は心の中でつぶやいた。

 

おわり

 

 

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