短編小説 ありのママ

8日目のセミは珍しくありません

第208話 8日目のセミ

「ショウ。すごいぞ!!【8日目のセミ】が出品されている。」と興奮気味に話すお兄ちゃん。

お兄ちゃんは、なかなか手に入らないもので試験の願掛けをしようとしていた。

「このオークションを制したら、試験にも通りそうな気がする。」と。

まだ、7月だけど、もう願掛けなんだね。

で、見つけたのが【8日目のセミ】らしい。

そこには『ミンミンミーン〜♬』と鳴くセミの動画があった。

商品詳細の所には【8日目のセミです。このセミの生命力を貴方の元に。8日目まで生きているセミは、珍しい逸品ですので、良い事が起こるかも?】と書いてあった。

恐ろしく怪しさ満載だ。こんなの誰も買いやしない。
だって……

「ショウ。これいいなぁ。最低価格もお手ごろだし。悩むなぁ~。セミが8日目まで生きるなんて凄い事だしなぁ。」とお兄ちゃん。その【8日目のセミ】を見てお兄ちゃんの目は輝いている。

あまりにも純粋に見ているお兄ちゃんに『怪しいよ。』とはいえない雰囲気だ。

「こういうことは、すこし落ち着いて考えるのが一番だな。あと期限まで3日もあるし、ゆっくりと考えよう。あぁ、でも誰か落札したらどうしょう。」とお兄ちゃん。

オークションサイトの残り時間を見ると3日になっていた。

……この出品者もアホなのか?それじゃ【8日目のセミ】が死んでしまうじゃないか。

それから、お兄ちゃんはその【8日目のセミ】を誰かが落札しないかちょこちょこチェックしていた。

……誰も買わないと思うけど。

喉元まで出かかっている言葉をグッと飲み込む。

それから、しばらく経って「よし、決心がついたぞ。」とお兄ちゃん。

ようやく諦めたのかとホッとしていると

「入札ボタンをポチリとな。」とお兄ちゃんは、【8日目のセミ】を入札した。

お兄ちゃんが、僕に微笑む。僕もお兄ちゃんに微笑み返す。

なんだか、複雑な気分だ。

―次の日。

美姫さんが僕に「ショウ。あそこに見える【セミ】を取ってこの箱に入れてくれない?」と言った。

美姫さんが指さす方向の窓の外には、一匹の【セミ】がいた。

「わかった。」僕はそう言い、外に出て【セミ】を捕まえる。美姫さんの指定した箱にセミを入れる。セミが「ジジジジジィ〜」と言って、箱の中で暴れまわっている。

「はい、美姫さん。【セミ】が可哀そうだよ。」と僕は美姫さんに箱を渡す。

すると美姫さんがニヤリと笑い
「なんと、ショウ。この【セミ】ね、【9日目のセミ】なんだよ。オークションサイトで売りに出したら、売れたんだ~。【8日目のセミ】で出品したから、一日長く生きているのは、秘密だけど。」と言った。

………世界ってなんて狭いんだろう。

おしまい

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