第198話 お兄ちゃんvsマスク
例のマスクが届いた。
小学生の僕でもわかる。
今更感。
だって、配送が遅すぎるからマスクは、みんな自分で手に入れた。
「父さん。このマスクって、必要な人に渡してもいい?」とお兄ちゃんが言う。
「あぁ、いいよ。うちはマスクが足りているからね。」とお父さん。
流石だな。お兄ちゃん。僕は感心する。
「で、どこに送るんだ?」とお父さん。
「最終的に、テレビにいつもこのマスクをしている人に送ろうと思って。」とお兄ちゃん。
はぁ?それって……。
「また、何で?必要としている人たちは他にもいただろう?」とお父さん。
「うん。ちらほら見つけたよ。でもね…」とお兄ちゃんは続けた。
「毎日、付けているんだよ。4月のはじめからずっと。他の人たちは、手作りマスクも付けたりしているのに彼だけはあのマスク。巷の噂じゃ、あのマスクは何回か洗ったら縮むって言うじゃん。毎日付けている彼が、一番必要なんじゃないのかな?それに、彼は自分の言葉で話せないんだよ。いつも、紙を見て話しているでしょ。僕の予想じゃ、欲しくても欲しいって言えないのかもしれない。」とお兄ちゃん。
お兄ちゃん。お兄ちゃんは、ものすごく勘違いしていると思う。
するとお父さんが「ユウ。世の中には、見えているモノだけが本当の事ではないぞ。多分というか、彼は絶対に大丈夫だ。ユウが調べた団体に送りなさい。」と言った。
「見えているモノだけが本当の事ではない?! 世の中って本当に複雑だなぁ。」とお兄ちゃん。
僕は、お兄ちゃんの脳内の方が複雑だと思う。
おしまい
※この話はフィクションです。マスクが必要で無いと感じても、送り返してはいけません。