短編小説:ありのママ 【美姫さんvs時代】

 

短編小説:ありのママ 

美姫さんvs文明

 

 

美姫さんは、ものすごい方向音痴。

ある時二人で出掛けた。

で、道に迷った。

「美姫さん、スマホの地図を見ればいいんだよ。」と僕が言うと

「ダメ。そんなのもう古い。」と美姫さん。

 

と言って、キョロキョロ辺りを見回している。

 

「今は、ナビで教えてくれるんだよ。どんな風に行ったらいいか全部教えてくれるの。」と僕が言うと

 

「だめ。そんなの古い。」と美姫さんは言い

何故かその場で目をつぶった。そして大きく深呼吸を一回。

すると目を開き一言。

「雑な匂いが多すぎる。今日は無理。」と、残念そうな顔をして、電話を掛けた。

  

「こうちゃん。ここどこ?右に行くと思う?左かな?」とお父さんが電話に出るなり言う。

 

…美姫さん。そんなの電話先のお父さんがわかるわけないじゃん。

 

「ショウに代わるの?わかった。」と美姫さんは電話を僕に渡した。

 

『ショウか。行き先は分かってるんだろ?美姫さんのスマホで検索してな。』とお父さん。

「美姫さんに言ったら、そんなの古いって。」と僕が言うと

 

『あっ、美姫さん。地図読めないからね。地図持ちながらグルグルまわるんだよ。自分がいる位置がわからないらしい。』と電話先のお父さんが言う。

 

「美姫さん、ナビも古いって。」と僕が言うと

『ナビに怒るからな~。“【次は右】の次はどの次よ!!”って。』とお父さん。

 

「そして、匂い嗅いでたよ。」と僕が言うと

『あぁ、食べ物屋なら匂いで嗅ぎ分けられるからね。』とお父さん。

 

匂いを嗅いでたのはそのせいか……。今日の用事は飲食店じゃないからな。

 

「わかった。」と僕は電話を切り、そのまま地図を開く。

それをのぞき込む美姫さん。

 

「あぁ、これ、もうちょっと使い勝手がよければいいのに。全然使いもんにならないんだよね。ほら、【100m先を右】とかやめて【10歩歩いたら右】とかにしてほしい。」と美姫さん。そして「ショウは分かるの?」と僕にきいた。

 

僕は、スマホ画面を見ながら「分かるよ。」というと

 

「すごいね。私にはまだ時代が古すぎる。」と美姫さん。

「へぇー。美姫さんの時代って?」と僕が聞くと

 

「ドアを開けたら、その場所にいける時代。」と美姫さん。

 

どこでもドアね。

生きてる間に美姫さんの時代がくるといいね。

 

 

おしまい