第152話 美姫さんvs大掃除
寒くなってくると、美姫さんの動きはさらに鈍くなっていく。
ただ、うちの中は寒くない。美姫さんのおかげ?せい?で、暑いぐらいだ。
美姫さんが寒いと感じるのは、テレビの天気予報の温度を見るからだ。
「ギャー。今日は最低温度が10℃だって。ソファの上でジッとしとかなきゃ。」と美姫さん。家の中の室温計は27℃を指している。
……寒くないよね。それに夏もソファの上にいるじゃん。
そんな中、お父さんが「そろそろ大掃除をはじめるか」と言い出した。
するとすぐに美姫さんが「大掃除はプロに頼むのが一番だよ。プロの領域に素人が手を出したら駄目だと思う。」と言い出した。
要は、大掃除がしたくないんだな。
「たまには担当制にするか」とお父さんが美姫さんを無視して言う。
「いいね!」と僕が同意する。
「あっ、前の夕飯の片付けの時みたいなBGM担当はダメだからね~。」*1と僕が美姫さんにくぎをさす。
美姫さんが眉間にシワをよせる。
僕とお父さんは顔を見合わせてニヤリとする。
今年の大掃除は美姫さんも参加だなと思っていると
「はい。私、仲介担当になります。」と美姫さん。
は?僕とお父さんが首をかしげてると
「掃除場所と掃除をする人の仲介をします。じゃぁ、掃除場所を書きだしていくね。」と美姫さんは言い、紙とペンを持ってきて【窓・床・……】と掃除場所を書きだしていく。そして「では、いきますよー。【窓】掃除がいい人!」と美姫さん。
僕とお父さんは意味が分からず二人で顔を見合わせながら、お父さんが恐る恐る手をあげた。
「じゃぁ、【窓】はこうちゃんね。」と美姫さんは言い、紙の窓の欄に【こうちゃん】と書いた。
「そしたら、次はね……」と美姫さんは次々と掃除場所を提示していった。
手をあげるのは僕かお父さん。
最後の掃除場所の担当が決まると「はい。頑張ってくださいねー」と美姫さん。
「美姫さんは、掃除しないの?」と僕が聞くと
「私の担当する仕事は終わったよ。【仲介担当】って言ったでしょ。」とにこやかに美姫さんは言った。
おしまい