短編小説 ありのママ

夫婦の形は様々。

第148話 美姫さんとお父さん

日曜日の朝、僕が起きてきてリビングに行くととっても珍しい光景を目にした。

「美姫さん。いいでしょ。これ買っても。」とお父さんがソファーでゴロッとしている美姫さんの横に座りながら、何やらお願いをしている。

お父さんが美姫さんにお願い事をする光景なんてあまり見ないので、僕はジッと黙って観察することにした。

「ほら、こんなにいいもんなんだよ。それにいつもより安いんだよ。ひとめぼれなんだよ。」とお父さんが美姫さんに言う。

すると美姫さんが目を開けて「あのさー、ひとめぼれって何?。こうちゃんの目はそんなに目利きの目なの?」とお父さんが美姫さんに見せているパンフレットを見ながら、ブスっと言う美姫さん。

その言葉にゴモゴモとゴモるお父さん。

「買うなら、最低は半年以上は毎日毎時間そのパンフレットを見なきゃ。」と美姫さん。

「美姫さんだって、ひとめぼれするだろう?」とお父さんが反撃をする。

すると美姫さんがすくっと起き上がってソファーに座り「私は、目が利くからいいの。何て言ったって、私が初めて一目ぼれしたものって何か知ってる?」と美姫さん。

お父さんが何故か表情が明るくなり動揺する。

そして「僕?」と言った。

僕は吹き出しそうになった。

「はぁ?何言ってるの?こうちゃんは気付いたらそこにいたんじゃん。ひとめぼれじゃないよ。」とちょっと起こり気味に美姫さんは言った。

お父さんがちょっと落ち込む。

そして「誰?」と拗ねた感じで言う。

「私が一目ぼれしたのは、ショウだよ。産まれて一目会った時から大好きだった。」と美姫さんがニッコリ笑いながら言う。

お父さんが複雑な顔をしている。

僕はお父さんがちょっとかわいそうになったので「美姫さん。お父さんが欲しいもの買ってもいいんじゃない?」と言うと

「じゃぁ仕方ないな。買ってもよし。」とあっさりと言い出す美姫さん。

「これから、欲しいものが有るときはショウに頼まないとな」とお父さん。

お父さん……頑張れ。

おしまい

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