短編小説 ありのママ

手抜きご飯とは

第213話 美姫さんvs手抜きご飯

「美姫さん、鈴木くんちっていつも手抜きご飯なんだって。」
学校で、鈴木君が言っていた。『僕んちは、手抜きご飯ばっかり』って。

今日もソファーでゴロゴロしていた美姫さんが、いきなりガバッと起き上がる。

そして、キラキラした目を僕に向け「鈴木くんは、仙人なのかい?」と言った。

僕は、食べていたお菓子を落としそうになる。

「鈴木くんは、僕と同じクラスの子だよ。」と僕が言う。

「だって、いつも【手抜きご飯】なんでしょ。」と美姫さん。

「うん。そう言ってた。でも、なんで【手抜きご飯】だと仙人なの?」と僕は聞き返す。

「じゃぁ、ショウは、どんなのが【手抜きご飯】だと思う?」と美姫さんも聞き返してきた。

「あんまり手のかからないご飯の事かな?」と僕が言うと

「例えばどんなのがある?」と美姫さん。

「お惣菜?とか、買ってきたお弁当?」と僕が言うと

「それは、【買う手間】と【何がいいか考える手間】があるから、【手抜きご飯】では無いね。」と美姫さん。

「冷凍食品は?」と僕。

「それもお惣菜と一緒で【買う手間】と【何がいいか考える手間】もかかるし、物によっちゃ【レンジでチンする手間】とか【調理する手間】がかかってるじゃん。」と美姫さん。

「じゃぁ、【カップ麺】」と僕が言うと

「【お湯を入れる手間】と【時間を計らないといけない手間】があるから【手抜きご飯】じゃない。」と美姫さん。

「うーん。外食。」と僕。

「【食べに行く手間】と【何を食べようか考える手間】がかかってる。」と美姫さん。

ホントだ。全部に【手間】がかかってる。
手抜きご飯なんてこの世には存在しないのかもしれない。

「仙人は、なんで【手抜きご飯】なの?」と僕が聞くと

「仙人は、霞を食べて生きてるんだよ。息をしたら、自然と入ってくるもの。なんの【手間】もかかってないじゃん。私の理想なんだよね〜。」と美姫さんは言った。

次の日、僕は鈴木くんに昨晩の夕食は何だったかを聞いてみた。

「レトルトカレー」鈴木くんは答えた。

……鈴木くん、仙人じゃない。

おしまい

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