短編小説 ありのママ

夏本番ですね。

第207話 美姫さんの省エネ

美姫さんの部屋のエアコンの調子がおかしいらしい。

美姫さんは、終日リビングにいるから問題ないと思うんだけど、部屋に籠りたい時もあるらしく(月に1回あるかないか)、ブツブツ言っている。

お父さんの休みの日にエアコンを買いに行く事にした。

珍しく美姫さんも付いてくる。

「こうちゃんなんかに私の部屋のエアコンを任していられない。」だって。

エアコンにはこだわりがあるらしい。

電気屋に着き、エアコン売り場に一直線。

そしてぐるっとエアコン売り場の隅から隅まで歩いたかと思うと、一台のエアコンの前で立ち止まり、

「このエアコンにする。」と美姫さんがひと言。

店員さんにエアコンの説明を聞く事もなく、どんな機能が付いているのか……美姫さん、さすがはエアコンにこだわりがあるって言ってただけちゃんと下調べをしてきたんだーとほんの少し感心する。

と、お父さんが「決め手は?」と聞く。

「【省エネ大賞受賞】って書いてあるじゃん。ココが決め手かな?」と美姫さん。

僕は、衝撃を受けた。美姫さんの口から【省エネ】って言葉が聞けるとは。
変な食べ物でも食べたのかな?

【省エネ大賞受賞】のエアコンは、お父さんも納得のエアコンだったらしく、めでたく美姫さんの部屋に設置されることになった。

―― 数日後、エアコン設置の業者さんがきてエアコンが設置された。

美姫さんがルンルンしながら、エアコンの【省エネモード】のスイッチをポチリとつける。

まぁまぁ、適度な温度の風が出てくる。

プチッ。

僕は、何かが切れる音を聞いたような気がした。

「あれ?おかしいなぁ?」と美姫さん。

一度エアコンのスイッチをオフにしてまた【省エネモード】のボタンをポチリと押す。

まぁまぁ、適度な温度の風が出てくる。

あぁ、美姫さんが切れるな。僕は確信する。

皆さんもご存知だと思うが、美姫さんの冷房の設定温度は21℃。風量は強。それ以外は、許せないらしい。

「ねぇ、ショウ。このエアコン壊れてる。」と美姫さん。

えっ?省エネモードを選んで付けてたのは美姫さんじゃん。

「美姫さんが【省エネモード】で付けるからだよ。」と僕が言うと

「はぁ?【省エネモード】って、人間が省エネモードになれる温度の事じゃないの?」と美姫さん。

「なにそれ?」と僕が聞くと

「人はさ、暑かったり寒かったりするとエネルギーをすっごく消費するじゃん。だから、人が【省エネモード】で動けるようにエアコンはガンガン効いてくれるんじゃないの?そのための【省エネ大賞受賞】じゃないの?」と美姫さん。

僕は、家電製品の省エネの意味を教えてあげた。

美姫さんの部屋のエアコンの【省エネモード】は封印された。

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