短編小説 ありのママ

貴女に何がわかる。

第182話 美姫さんvsおばあさん

美姫さんと歩いてると、

「姓名判断無料でします」と書かれた看板と共に年配のおばあさんがいた。

「姓名判断だって、面白そうじゃない?」と僕。

「自分の個人情報と引き換えなんて恐ろしい。偽名でできるならするけど。」と美姫さん。

偽名じゃ駄目でしょ。

と、僕たちの話し声が聞こえたのかおばあさんが

「名前が嫌なら、手相もみれますよ」と言ってきた。

「手相も見てもらえるんだって」と僕。

「僕、見てあげようか~」とおばあさんが言う。

僕が美姫さんを見ると苦虫を嚙み潰したような変な顔をしている美姫さん。

「してもらえば、いいんじゃない?」と美姫さんは言った。

僕はおばあさんの前に座り机の上に手のひらを出した。

おばあさんがじーっと僕の手を見る。

そして顔をあげニッコリと笑い「素晴らしい手相!」と言った。

手相が素晴らしいってなんだ?

僕が「あの、どの辺が?」と聞くと

「全体的にね。」とおばあさんは言った。

それからすぐに「お姉さんもほら一緒にどうぞ。」と美姫さんに言う。

お姉さん?僕は可笑しくなる。

どうみてもおばちゃんなのに。

おばあさんは、僕には興味がないようだった。

狙いは美姫さん。

僕はちょっとおばあさんにムカッとしたので、美姫さんと対決させたいと思ってしまった。

「お母さん、見てもえばいいんじゃない?!手相好きでしょ。」と僕が言う。

美姫さんが怪訝な顔をする。

「あら、お母さんだったの?またお姉さんみたいなお母さんね。」とおばあさん。

おばあさんがまた美姫さんの事をお姉さんという。おばあさんはもしかしたら、目が悪いのかもしれない。

美姫さんが僕をジロッとみる。

僕はニッコリと微笑んであげる。

美姫さんもニッコリと微笑み返してくれた。どうやら、僕の意図を理解してくれたみたいだ。

美姫さんがおばあさんの前に座り机の上に手をひろげて置く。

おばあさんがジックリと美姫さんの手相を見る。

僕の何倍の時間もかけて。

そして一言。

「あら、大変。」と言い出した。

「お母さん、手相によくない線が出てますよ。」とおばあさん。

それを聞いた美姫さんが僕の方を見る。

僕はおばあさんに何か言うように促す。

「まぁ、一時的なものですよね。」と美姫さん。

「いえ、これはご主人を不幸にする線ですね。」と真面目な顔で言うおばあさん。

「そうなんですか。でも、手相って変わるっていいますからね。」と冷静な美姫さん。

「いえ、この線はなかなか消えない線です。」とキッパリとおばあさん。

すると美姫さんニッコリとしておばあさんに

「教えて頂いてありがとうございます。これで心置きなく夫婦を続けていけます。」と美姫さん。

「奥さん、これはご主人を不幸にする線なんですよ。この線を消すにはですね…この石を……」とおばあさんがおばあさんの横に置いてあった箱の中から何かを取り出しながら言うのを美姫さんはさえぎり、ひと言。

「主人の【飼い殺し】が私の目的なんです。達成できそうで安心しました。」と言い立ち去った。

家に帰ってお父さんに「美姫さんね、お父さんの事を『飼い殺し』にするんだって~」と教えるとお父さんは笑いだし「そりゃ、楽しみだなぁ~」と言った。

夫婦ってわからないなぁ。

おしまい

※この短編小説ありのママは、ほぼフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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