第86話 美姫さんvs不思議なおばさん
3人で、どこか出かけるとたまに不思議なおばさん達に会う。
「あら、坊やいくつ?」とおばさん達は聞いてくる。
「○○歳です。」と僕がその当時の歳を答えると「あらそうなの。うちの孫もね~」とおばさん達は言ってくる。
僕もお父さんも苦笑いをするが、美姫さんは興味の無い顔で、おばさん達の口元をジッと見ている。
で、おばさん達の極めつけは「お母さんにも弟か妹か産んでもらいなさい。」と言い、美姫さんに向かって「子どもは、多い方がいいわよ。まだ、産めるでしょ。」と言ってくる。
すると美姫さんは、満面の笑みで「それ、うちは主人の仕事なんです。」と言う。
その答えにおばさん達は、大概、動きが止まる。
そして、珍しいものを見るかの様な目をして、僕たちを順番に見て、黙って僕たちから離れる。
ある日、広瀬さんから美姫さんに電話がきた。
専業主夫になった康夫さんが、外出を嫌がるようになったそうだ。
原因は、ひとりの不思議なおばさんのせいらしい。
康夫さんが、夕飯の買い物に行く時にその不思議なおばさんに出会うらしいのだが、「何で働いてないの?。」とか「奥さんは、何しているの?。」とか「子どもはまだなの?」とか康夫さんに言ってくるらしい。
康夫さんが真面目に答えても、自分の考えを押し付けるだけで……、ついに康夫さんは、家から出るのが嫌になったらしい。
美姫さんはひと通り話を聞いた後、「わかった。」とひと言だけいい、電話を切った。
それからしばらくした休みの前の日、美姫さんが珍しく「明日、みんなで結花の家に遊びに行きます〜」と言った。
ぼくは、広瀬さんちは、大好きだから大歓迎だった。
次の日、広瀬さんちに遊びに行く。
お昼を過ぎた頃美姫さんが「みんなで、近くのスーパーに買い物に行こう!」と言い出した。
珍しい事もあるもんだと、5人で広瀬さんちの近くのスーパーに行く。
その時、お店の入り口で美姫さんが「あら、こんにちは。」とひとりのおばさんに声をかけた。
美姫さんに声をかけられて、ギョッとするおばさん。そして、僕たちを見て、またギョッとした。「あっ、どうも」と康夫さんがそのおばさんに言った。
おばさんの顔は引きつり、そのままスーパーから逃げるように出て行った。
夕飯の買い物をして、広瀬さんの家に帰る。帰ってすぐに康夫さんが「美姫さん、あのおばさんに何かしたの?」と聞いてきた。
康夫さんが言うには、あのおばさんが康夫さんに嫌なことばかりを聞いてきた不思議なおばさんだったらしい。
「ちょっと仲良くなってね…。おばさんの考え方を全否定してあげた。」と得意げな美姫さん。
その場に冷たい空気が、流れる。
それから数日後、美姫さんに広瀬さんからお礼の電話があった。不思議なおばさんは、康夫さんの顔を見ると逃げるようになったそうだ。「やっぱ、美姫さんは、カミサマだ。」と康夫さんが言ってるよ〜と広瀬さん。
康夫さん、目を覚まして!!
おわり