第93話 美姫さんvs発表
今日は、学校で驚く事があった。僕は、ランドセルを自分の部屋に急いで持って行き、リビングのソファーで、いつものようにだらっとしている美姫さんに話す。
「美姫さん。僕ね、今度みんなの代表で発表することになった~。」と僕が言うと「すごいじゃん。ショウ。楽しみだね。」と美姫さん。
「でも、みんなの前で発表するから緊張するな~。」と僕が言うと、美姫さんが「それじゃぁ、みんなの前で発表する心得を教えてあげるね。」と言った。
「美姫さんも、みんなの前で何か発表したことがあるの?」と僕が聞くと「いや~。ないよ。」と美姫さんは首を横にふった。
「じゃぁ、なんで心得が分かるの?」と僕が不思議そうに聞くと「聞く側の立場から見た、発表はこうあってほしいってものの心得だよ。」と美姫さん。
ほぉー。なるほど。僕は感心してしまう。
「で、その心得って?」と僕が聞くと
「まず、第一に良い声でないといけない。」と美姫さん。
「良い声って?」と僕。「良い声ってのは、渋い低音の効いた声。」と美姫さんは言った。
それって、美姫さんの好きな声じゃないの?と僕は思ってしまう。
「渋い低音の効いた声ね……。出せるか練習してみるよ。じゃぁ、次の心得は?」と僕が聞くと
「次の心得は、においだね。」と美姫さんが言う。
「におい?」と僕が聞くと「臭いにおいの人とは、同じ空間にいたくないじゃない。早く帰りたくなって、話を聞くどころではないと思う。」と美姫さん。
なんとなくは、わかる。でも、僕もいろいろな人の話を聞くけど、においを気にした事がないな。
「においね……。気をつけておくよ。で、次は?」と僕が聞くと
「次は、所作だね。」と美姫さんは言った。「所作?」僕が聞くと「動きのきれいな人って、見入っちゃうでしょ。お辞儀が綺麗だったり、ね。」と美姫さん。
うーん。なるほど。これは何となくそうかな?
「次は?」と僕が聞くと「最後は、文の中に『えー。』とか『あー。』とか入れながら話す事。これをされるとものすごく聞き入っちゃうんだよね。『えー。』って何回言ったかなって。」と美姫さん。
まぁ、気になるは気になるけど……。えっ?僕は大切な事を思い出す。
「美姫さん。それが最後?」と僕が聞く。「そう、これだけ。」と美姫さん。
「話す内容は?」と僕が聞くと「あぁそれ。大丈夫。誰も聞いてないから。」と美姫さん。
えぇーーーーーーーーーーーっ。
おしまい