第138話 美姫さんvsインフルエンサー
ー今日、何曜日だっけ。ー
壁に掛けてあるカレンダーを見る。
―木曜日か。あと、一日学校に行ったら休みだな。ー
と、週末の土曜日の欄に【仕事】と、枠からはみ出るぐらい大きな字で書いてある。
仕事の字の上に怒りマークまで、書いてある。
「美姫さん。土曜日仕事なの?」と僕が聞くと
「そうなのよ。土曜出勤。世間はお休みなのにね。」とちょっと浮かない表情の美姫さん。
土曜日でも働いている人たくさんいるからね。それに美姫さん、平日全部休みじゃん。と僕は可笑しくなる。
「で、何の仕事?」と僕が聞くと
「1日店長。」と美姫さん。
僕はまた可笑しくなる。“一日店長”って、芸能人みたいじゃん。
土曜日、僕は美姫さんの仕事に着いて行く。
美姫さんの仕事先は、今流行りのアイスクリーム屋さんだった。僕と美姫さんは、アイスクリーム屋さんの奥の事務所に通された。
そして、アイスクリームを好きなだけ食べさせてもらった。
「美味しい。」僕が言うとニコニコ顔の美姫さん。
それから、アイスクリーム屋さんの事務所でまったりと過ごした。
ー店長っていい仕事、好きなアイスクリームが食べ放題だ〜。ー
なんて僕が思ってると
「店長、お客さんです。」と、さっきアイスをくれたお姉さんが事務所にやってきた。
「ショウ、ちょっと待っててね。」と美姫さんはいい、事務所をでていった。
僕は、コッソリとついていく。
そこには、若い女の人が2人いた。
「ご用件は何でしょうか?」と美姫さん。
2人の女の人は、高圧的な態度で、こう言った。
「先週も来て話したんですけどぉー。あのぉー。私達ぃー。インフルエンサーなんですよぉー。」
「あぁ、今流行りの。」と美姫さんは嫌味っぽく言い、「で、それがどうかしました?」と続けた。
「あのぉー。私達ぃー。インスタのフォロワー、めっちゃ多いんですよぉー。」と女の人。
「それは、良かったですね。で、それがどうかしました?」と美姫さん。
「意味わかりません?」と女の人。
「意味?……貴女のインスタのフォロワーが多いって事と貴女がインフルエンサーってのは、貴女から説明を受けましたが、そこに何か意味があるとしても全く興味はありませんが」と美姫さん。
すると、女の人はコソコソと2人で話をして、「私たちが、この店のアイスをインスタにあげるとお客が増えると思うんですよぉー。」と言った。
すると美姫さんはしばらく考えたフリをした後
「あぁ、すみません。気づかずに。うちのアイスを貴女がインスタにあげたら、【いいね】を押しますね」とニッコリとして言った。
女の人達は、プリプリと怒りながらアイスも食べずに無言で帰って言った。
「ねぇ、ショウ。インフルエンサーの欲しいものって【いいね】じゃないのかな?」と美姫さんは首を傾げた。
「う〜ん?!わかんない。」と僕。
帰ってからお父さんに聞いてみた。
「あぁ、その話。そのインフルエンサーの人はアイスを無料で食べたかったみたいだよ。先週も来たらしくって本物の店長さんが困ってたみたいなんだ。どうやって追い返そうって。」とお父さん。
その後、アイスクリーム屋さんに
【インフルエンサーの方、必見。今なら、お店の紹介をしていただくと店長からの〈いいね〉をプレゼントします。詳細は店員まで】
の張り紙がついた。
よくわからないけど、これでいいのかな?
おしまい