短編小説 ありのママ

言葉は人を左右する

第94話 美姫さんvs言葉

「美姫さん、結婚って良いものなの?」と僕が聞くと「知らない。」と一言美姫さん。

「じゃあ、テレビで結婚していない人が『結婚したい―。』って言ってるのはなぜ?」と僕が聞くと

「そりゃ、無いものねだりだよ。ショウだって、自分が持ってないものを他人が持っていると欲しいなぁっておもう事があるでしょ。」と美姫さん。

「でも、おじいちゃんが、『結婚はいいもんだぞ~。』って言ってたよ。」と僕が言うと、

「それは、まさおくんが結婚しかしていないからじゃないの?。結婚しなかった人生だったら、『結婚しない方がいいぞ~』って言うんじゃない?」と美姫さん。

そんなものなのかな?

「私だって、結婚してなかったら、『独身の方が楽しいよ~』って言うかもしれないじゃん。」と美姫さんは言い「ショウだって、今『結婚はいいぞ~』って言われても、『結婚するより今のままがいい』って思うでしょ。」と続けた。

確かに、まだ結婚にイメージも出来ないし、今のままがまだいいかな?

「でもね、おじいちゃん。『美姫さんには、浩一くんしかいなくて、浩一くんには美姫さんしかいなかったんだぞ。おじいちゃんにもおばあちゃんしかいなかったんだ。』って言ってたよ。」と僕が言うと

「なにそれ。余り物同士が仕方なく結婚した感があるんだけど……。そりゃ、まさおくんには良子さんしかいなかったんだとは思うけど。」とちょっとムスッとする美姫さん。

美姫さんは、おじいちゃんに電話をかけた。

「あのさー、とっても可愛いひとり娘があまりもの扱いってどういう事?」と美姫さん。

僕は、思わず吹き出してしまう。

誰が【とっても可愛い娘】なんだろう。

電話の向こうで、弁明しているおじいちゃんの声が聞こえる。

「でもさ、私はそんな風に感じたんだよ。」と美姫さんは、ひとしきりおじいちゃんに文句を言った後、お詫びのしるしとして、外食の約束を取り付けた。

その日の夕食は、みんなで美味しい鰻を食べに行った。

帰り道「美姫さん。おじいちゃんはさ、美姫さんとお父さんの事を唯一無二の存在だって言いたかったんじゃないの?」と僕が言うと

「知ってる。」とニヤリと美姫さん。

言葉には気をつけようと思った。

 おわり

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