短編小説 ありのママ

人にやさしく。

第181話 お兄ちゃんvsおばさん

休みの日、お兄ちゃんと近所であった【チョコレートランド】 という催し物に行く。

色々な国のチョコレートが販売されているらしい。

会場の近くに着くとチョコレートの匂いでいっぱいだった。

「おいしそうな匂いがするね~」と僕。

「ホントだな。楽しみだ。」とお兄ちゃん。

会場をグルっと見渡すと一か所、異彩を放つ場所があった。物凄い行列が出来ている。

「あの行列なんだろう。」と僕が指さすと

「近づいてみるか?」とお兄ちゃん。

2人でテクテク歩いていくとそこは《好きなチョコを3つプレゼント》と書いてあった。

「3つも貰えるんだって。」と僕が言ったが

「ショウ。凄い行列だぞ。並ぶの好きじゃないんだよな。売っているのを買いに行こうか。」とお兄ちゃん。

「そうだね。」と僕も同意する。

《好きなチョコ》と書いてあるだけあって、みんな選ぶから進みも遅い。

それに早い者勝ちだから、人気のチョコはすぐに無くなりそうだ。

と、その時行列の最後尾の方で「スタッフの方~」と呼ぶ声が聞こえた。

スタッフが慌てて走っていく。

どうやら、オバさんが座り込んでいる。

「具合が悪いのかな?」と僕が言うと

「そうなのかもな。」とお兄ちゃん。

すると座り込んでいたオバさんがスタッフに抱え込まれるようにこちらにやってきた。

「すみません。具合が悪いみたいなんで順番を先にしてもよろしいでしょうか?」とスタッフが並んでた人達に言う。

少し困惑気味ではあったが「まぁね、具合が悪いんだったら。」とどこからともなく聞こえてきた。

「すみません。」と頭をさげるスタッフ。

当のオバさんはというと、うつむき加減だった。

「どのチョコが…」とスタッフがオバさんが言う。

「あのチョコとこれとそれ…。あと主人が具合が悪くて家で待っているから主人の分も……。」とオバさんが言ったところで、お兄ちゃんが

「ちょっと待って。」と大声で言った。

そして「具合悪いんだったら、僕が病院に一緒に行きますよ。いや〜チョコをもらってる暇なんかないですよ。」と言い、オバさんの手を引き始めた。

みんな、ポカンとしてる。

「ショウは入り口で、タクシー捕まえてて。」とお兄ちゃんは僕に言った

「あぁ、はい…。」と僕は返事をする。

オバさん、チョコを恨めしそうにチラチラ振り返りながら歩くから足取りが重い。

お兄ちゃんはついにオバさんをオンブしはじめた。

「ショウ、ダッシュ。」お兄ちゃんが僕に言う。

ようやく我に帰り、僕は走る。

僕たちはタクシーに乗り、病院に行った。

嫌がるオバさんをよそに、お兄ちゃんは「どこが悪いのか分からないのが一番怖い。」と強引に全身の検査をさせていた。

案の定、どこも悪いところなんか無かった。

オバさんは、無料のチョコレートを手にも入れられず、タクシー代と大量の検査費用を払った。

おしまい

※この短編小説ありのママは、ほぼフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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