第106話 美姫さんの選択術
「クラスの子が、みんな持ってる」とか「◯◯が言ってたから〜」と言う言い方を僕がすると「ショウはみんなが死んだら、死ぬの?」とか「◯◯が、ショウに死ねって言ったら死ぬの?」と美姫さんは言う。
どうやら、自分のことは自分で決めなさいって事らしい。
「でもさ、悩む事だってあるじゃん。」と言うと「そんな時には右手と左手でジャンケンするの」と真顔で言う美姫さん。
右手と左手でジャンケン?
「そんなの永遠に決着がつかないじゃん」と僕が、言うと「おぉっ。よくワナにハマらなかったね〜。」とニコリとする美姫さん。
「だから、悩んだらどうするの?」と僕が聞くと「物事を決めるには、ジャンケンか……多数決?。」と美姫さん。
自分一人しかいないのにどうやって多数決するの!
僕がシラーっとした顔をしてると「ほら、手の指と足の指を合わせたら20本もあるじゃん!」と僕に教えてくれる美姫さん。
「だから、指には自分の意識があるから、多数決にならないじゃん!」と僕が強めの口調で言うと
「だてに12歳じゃ、ありませんな。」とニヤリとする美姫さん。
僕はもう、無視する事にした。
すると「ごめん。ショウ。あみだくじで決めればいいんだよ」と美姫さん。
あみだくじ?
「そんなの適当じゃん。」と僕が言うと「適当でいいんだよ。だってどっちに転んでも嫌な時は嫌だし、良い時はいいし。どっちでもいいんだよ。」と美姫さん。
「じゃぁ、何で自分で決めなきゃいけないの?適当だったら、人が決めたのでいいじゃん。」と僕が言うと
「ショウは、自分の人生を放棄するの?」と少し感にさわる言い方をする美姫さん。
「じゃあ、迷った時は美姫さんはどうやって決めてるの?」と僕は美姫さんに突っかかる。
「そんなの決まってるじゃん。こうちゃんが決めてるんだよ。」とドヤ顔の美姫さん。
うん?
美姫さんは何を言ってるんだ??
「じゃぁ、美姫さんはお父さんが死ねって言ったら死ぬの?」と僕が聞くと「こうちゃんが私に『死ね』って言うはずないじゃん。それに…」と美姫さん。
「それに…何?」と僕が聞くと「自分で決めなくて楽なうえに、嫌な時に愚痴れる。」と美姫さん。
ご愁傷様です。お父さん。
おしまい