短編小説 ありのママ

バレンタインチョコの渡し方

第170話 美姫さんvsバレンタイン

「美姫さん。バレンタインって知ってる?」と僕が聞くと

「バレンタイン?ロッテの監督だった人でしょ。知ってるよ。子どもの卒業式の日だけはお休みをくださいって言った人でしょ。」と美姫さん。

いや、それは僕が知らないし。

「ちがうよ。2月14日の事だよ。」と僕が言うと

「2月14日?あぁ、チョコの安売りの前の日ね。」と美姫さんは言った。

「チョコの安売り?」と僕が聞き返すと

「そう。何故かね、2月15日はスーパーに行くとチョコレートが安売りしているんだよ。」と美姫さん。

それ、売れ残りじゃん。

「あのね、美姫さん。2月14日ってのは、バレンタインって言って女の人が好きな男の人にチョコレートをあげるんだよ。」と僕が教えると

「なに。その男尊女卑的な行事。とっても腹立たしいんですけど。なんで、男子だけがチョコをもらえるの。」と美姫さん。

「いやいや、2月14日にチョコレートをもらった男子は、今度は3月14日にお返しをするんだよ。」と僕が言うと

「いや、全く意味が分からない。なんでそんなやり取りをしないといけないの?」と美姫さん。

「クラスの女子が言うには、そのお返しにも意味があるらしくてね。飴が返されたらその男子も自分の事が好きって事で、クッキーだったらお友達なんだって。」と僕が言うと

「飴とクッキーをもらうためにチョコレートを渡さないといけないの?!2月15日に自分で買った方がいいじゃん。」と美姫さん。

「でもね、バレンタインのお返しは3倍返しって言葉もあるらしいよ~。」と僕が言うと美姫さんの目が輝いた。

「……3倍返しね。」と美姫さんがブツブツと言いながらニヤリとする。

あっ……不味い事を教えたかな。

―バレンタイン当日―

「はい。チョコレート。」と美姫さんが僕とお父さんにチョコレートをくれた。

ちゃんと覚えてたんだ。と僕はビックリする。

「開けていい?」と僕は包装紙を開ける。

箱に太字で【お返しは不要です】と書いてあった。

と、お父さんの方を見ると

 むりはいいませんが

 ー、ひとつでいいです。か

 ん入り物ではなく

 ラクに考えて

 いいです。

 とにかくよろしく。

と書いてあった。

僕が、箱を開けて中を見ると美味しそうで可愛いチョコレートが並んでいた。

お父さんの方も見る。

箱の中にブラックサンダー*1が2つ入っていた。

美姫さんにコッソリと聞く。「お父さんの手紙の意味は何?」と僕が聞くと

「ムーンライト*2が食べたいなぁと思って。ちゃんと手紙を縦読みすると分かるようにしたんだよ。あれが190円ぐらいだったから、その3分の1の値段のチョコレートをあげたんだよ。」と美姫さんが教えてくれた。

ホワイトデーが楽しみだ。

おしまい

※この短編小説ありのママは、ほぼフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。バレンタインのお返しについては私の調べによるところもので、所説あります。

*1:有楽製菓株式会社のお菓子

*2:森永製菓株式会社のお菓子

おすすめ