短編小説:ありのママ  美姫さんvs野生の勘

短編小説:ありのママ 

美姫さんvs野生の勘

 

家に帰ると美姫さんがいきなり

「ショウ。これから、生き残るために必要な訓練をします。」と言ってきた。

「はぁ。」僕は、つれない返事をする。

 

僕はランドセルを部屋に置いてリビングに戻る。

 

いつものようにテーブルの上におやつがない。

すると、

「ショウ。目をつぶってください。」と美姫さん。

僕は訳が分からないが目をつぶる。

 

「では、問題です。今日のおやつは何でしょうか。」と美姫さん。

鼻先から、ぷーんと匂いがしてきた。

 

「チョコレート?」と僕が言うと

「うーん。まぁ、いいか。今日は初日だからね。」と美姫さん。

 

正解は、麦チョコだった。

 

「で、美姫さん。今度は何をするの?」と僕はおやつを食べながら聞く。

「これからは、野生の勘ってのが大事なんだと思うのよ。」と美姫さん。

 

「は?。これからは、AIの世界じゃないの?」と僕が聞くと

「あー。ダメダメ。あんなの電気がないと使い物にならないじゃん。その分、動物とか昆虫をみてごらん。生き残り方が凄いじゃない。自然災害が起こるときも逃げてるって聞くし。美味しい食べ物も知ってる。これからは、野生の勘ってのが重要。」と美姫さん。

 

また、時代と逆行した話だな……と、思いながら

「それとおやつと何の関係が?」と僕が聞くと

「まずは、食糧確保の勘をみがくために今日のおやつを当ててもらおうと思って。」と美姫さん。

 

まぁ、美姫さんの遊びに付き合ってあげるか…と、僕が思ったのが間違いだった。

次の日から、おやつの匂いを嗅いで、銘柄まで当てないと失格。おやつが食べれなくなったのだ。

 

おやつが食べれないのは、まぁいいとして、美姫さんに負けた気がするのがすごくしゃくに障る。

 

そんな日が何日か続いた後、週末が訪れた。

「ショウ。買い物行くぞ。」とお父さん。

「わかったー。」と僕は返事をし、お父さんと買い物に行く。

買い物の途中、お父さんが「ショウ。今週のおやつって何が良い?」と聞いてきた。

 

・・・今週のおやつ?・・・あっ。

 

僕は、肝心な事を忘れていた。僕のおやつを準備しているのはお父さんだったのだ。

僕は、心の中でニヤリとする。

そして「僕が自分で選ぶからいいよ。」と言った。

このミッションは、誰にもばれてはいけない。僕は、なるべく種類の違うお菓子を選んだ。

 

これなら、匂いがバラバラだから何のお菓子かわかるぞ。僕は、心の中で笑う。

 

 

月曜日から、ぼくはノーミスでお菓子を当て続けた。

 

金曜日の夜、美姫さんが、お父さんに

「ショウね、野生の勘が付いてきたんだよ。今日のおやつが匂いを嗅いだだけで、何かわかるんだよ。」と美姫さん。

 

それを聞いたお父さんは、一瞬真顔になる。

 

ぼくがヤバイ!と思った時、

お父さんが僕の方を向いてニンマリした。

そして「ショウ、凄いじゃん。」と言った。

僕は、「ハハハ~。」と変なテンションで笑ってしまった。

 

週末、お父さんと2人で買い物に行く。

「ショウ、おやつ選ぶぞ。美姫さんにばれなくて、ショウが当てやすいものを探さなきゃな。」とお父さんが言い、2人でお菓子を選ぶ。

 

その週の週明けの月曜日、美姫さんのおやつ当ては無く、テーブルの上にドンと置いてあった。

「野生の勘のおやつ当ては?」と僕が聞くと

「あぁ、あれはもう飽きた。」と美姫さん。

「飽きるの早すぎじゃない?」と僕が言うと

「しつこい男子は嫌われるよ~。」と美姫さん。

 

飽きっぽい女子も嫌われるよ〜。

 

おしまい