短編小説:よろず屋美姫、初仕事

よろず屋美姫、初仕事

お父さんが仕事から帰ってくるなり「美姫さん。よろず屋の初仕事決まったんだって。」と美姫さんに言う。

 

「うーん。そうかもー。」とつれない返事の美姫さん。

 

「えー。美姫さんようやく初仕事だね。で、どんなお仕事?」とお父さんに聞くと「康夫さんの友達がご飯屋さんをしているみたいなんだ。そこに変な人がやってくるらしい。それを退治する仕事みたいだぞ。」とお父さん。

 

どこかで聞いたような話だぞ。世の中、変な人だらけなんだなぁと僕は失笑してしまう。

 

「美姫さん。またビデオよろしくねー!」と僕が言うと「了解なり~。」と美姫さん。

初仕事の割には全く緊張している様子もない。

次の日帰ってくると美姫さんがパソコンで何やらしていた。

「なにしてるの?」と僕が聞くと「今日のお仕事をネットにあげようと思って。」と美姫さん。

そこには、男の人と美姫さんと映っていた。

「最初から見る?」と美姫さんが言う。僕は何度もうなづく。

美姫さんが早戻しをし、ビデオが始まった。

 

店のカウンターが映っている。そこにレストランの衣装であろう洋服を着て立っている美姫さん。それだけで、充分笑える光景だ。

そこに一人の男の人が女性を連れてやってきた。

 

『只今、満席なのでこちらでおまちください』と美姫さんが言う。

すると『店長さんはいるかな?』とその男性が聞く。『私が店長ですが。』と美姫さんが答える。

 

思わず美姫さんの顔を見ると映像の美姫さんのネームプレート指さした。そこには【店長】と書かれていた。

 

確かに店長だ。

 

『君が店長なの?この前は違ったのになぁ。じゃぁ、オーナー呼んで。』と男性。

『オーナーは、海外に行ってますが帰ってくるまでお待ちになりますか?』と美姫さん。

男性が言葉を失う。

 

『あのね、君。僕ねあまり言いたくないんだけど、こういう者なの。でね、忙しいんだよ。』と男性が美姫さんにポケットから出した名刺を見せる。

 

『あのー。私、この会社を知らないので申し訳ないのですが、この会社は世界的に有名な会社なのでしょうか?。』と美姫さん。

 

男の人の顔がムッとした表情になる。

 

「あの男の人、どこの会社の人?」と僕が聞くと

「私の知らない名前だったよ。わからない。」と美姫さん。

 

そりゃそうだろうね。美姫さんが、日本全国の会社の名前を知るはずがない。

 

『あのね。君。僕は議員の○○とも知り合いなんだよ。』とその男性が言う。『私もその方なら、良く存じ上げていますが。』と美姫さん。

 

美姫さんに「知り合いなの?」と聞くと「だってその議員さん、ここの選挙区の人だよ。そりゃ誰だって知ってるでしょ。」と笑いながら美姫さんは言った。

 

『君と喋ってても埒があかないから、ハッキリ言うけど、僕はね、君と違って忙しいの。席をあけてくれない?』と男性は言った。

 

『私、あなたがどんだけ忙しいのかはご存知ありませんが、並ばれている方皆さん忙しいと思いますよ。』と美姫さんが言うと

 

『重要さ度合いがみんなと違うの。僕の仕事は……。』と男性が言い終わらないうちに『スーパーヒーローか、正義の味方かされているんですか?。スーパーヒーローは重要ですもんね。スーパーヒーローを架空の人物とばかり思ってましたから、変身してくださったら、席をあけますね。』とニッコリしながら言う美姫さん。

 

『覚えておけよ。』と男性は捨て台詞を言い去っていった。

 

「これ、大丈夫なの?」と僕が言うと「大丈夫、大丈夫。今からネットに投稿するから。世界中の人に覚えてて貰えてたら、わたしが忘れても安心でしょ。」と美姫さんは言い、【拡散希望。面白い人発見。】と、変声した声と足元のみの動画に編集をして投稿した。

 

「報酬はどのくらい貰ったの?」と僕が聞くと「賄い飯。」と美姫さん。

 

面白かったから【賄い飯】で良かったんだって。 

 

 

おしまい