短編小説 ありのママ

夢は大きく。

第165話 美姫さんの夢

「美姫さんってさ、子どもの頃って何になりたかったの?」と僕が聞くと

「うーん、そうだね。」としばらく考えて「えら呼吸になりたかった。」と美姫さん。

「また、なんで?」と僕。

「だってさ、ジンベイザメって口開けてればエサが入ってくるし、国境も無いから自由だし。」と美姫さんは言った。

「美姫さん。哺乳類でも海の中で暮らしていけるよ」と僕が言うと

「えっ?そうなの?」と美姫さんが驚く。

「くじら。水中では息を止めててたまに浮上して息をするんだって。食べ方もジンベイザメと似ているよ」と僕が教えると

「おぉっ。今からでも遅くないじゃない。じゃあ、練習しなきゃ」と美姫さん。

次の日、学校から帰ると

「ショウ、聞いて!息止めが30秒から5秒伸びたよ。」と興奮気味の美姫さん。

そして美姫さんは電卓をたたきながら「一日5秒。1ヶ月で150秒。1年で54,750秒。それを時間に直すと約15時間、このまま5秒ずつ息止めがプラスされたら1年後には15時間も息止めが出来るんだよ。」と美姫さんがブイサインをする。

おぉっ。美姫さん、来年はクジラになれるね。

とお父さんが帰ってきてから「美姫さんね、来年にはクジラだよ。」と僕がいうと

「体重の話?」とお父さん。

「違うよ。美姫さんね、本物のクジラになりたいらしいんだよ。」と僕がいうと

「そりゃ凄いなぁ、楽しみだよ。クジラと家族になれるのか。」とお父さんは不敵な笑みを浮かべた。

それから3日後、美姫さんはクジラになる事を諦めた。

おしまい

おすすめ